maguro_ryo’s blog

だいたい20歳の人間がだいたい適当に書くやつです

怒号

小学一年生のときのことだ。授業中、担任の先生が居なくなった一瞬のうちに教室がわっと騒がしくなって、誰かが「うるさい!静かにして!」と叫び、その声にまた誰かが「うるさい!黙って!!」と言い、どんどん伝播して、「うるさい!」という声が「うるさい!」という声に「うるさい!」と叫んだらどんどん「うるさい!」が増えていって教室中「うるさい!」の重ね塗りで充ち、騒ぎを察知して担任が慌てて戻ってきた頃には余りの異様さに数人が泣き出していた。私は泣かなかった。教室中、声を荒げていた全員が、自分こそ正しいと思っていた。皆んなが自分の声を聞いてくれないから、こんな馬鹿馬鹿しい状況になっているのだと思っていた。声が誰にも届いていないような感触。ここで叫んでいる。鏡のように。仮に全員の「うるさい!」がぴったり揃って、際限なく一斉唱和し続けたとしたら、教室全体がトランス状態に入って、カラオケもTwitterも無い世界で誰一人淋しくなんかならなかったと思う。