maguro_ryo’s blog

だいたい20歳の人間がだいたい適当に書くやつです

鉄塔

かつて報告されていた鉄塔の存在を、空から降ったフューチャーフォンが確認している。二つ折りの接合部、本機よりも重たくなったたくさんのストラップ。くまちゃん、パンのスクイーズ、水の入ったビニルチャーム、狐の尻尾。(接合部、鉄塔の細いところに。)宙に突然現れた電脳都市は実は2026年を生きていて、それがねじれて、流行りの音楽もファッションも何もかもが2006年と全く同じである。冬、カーステレオで安部礼司を聞きながらUFOキャッチャーで取ってもらった馬鹿でかいぬいぐるみを抱えて、ショッピングモール一階のスーパーで買ってもらったパックのグレープジュースを飲んで、今日は帰ったら鍋にしようねと、鼻歌のジョンレノンを引きずって、寒い部屋に帰って、だんだんあたたかくなる橙色がいつか、私の将来になること、かなしくて泣き、贈られたスリッパの中で足が汗をかいている。どこまで頭をうずめられるかひとりで競うマフラーの中、意識に上げたとたんに首が痒くなるあの一瞬、投げ捨てる一瞬、あたたかさだけが残ってくれと、せめて空気を残していってくれと思っても、機械合わせで冷やされた医療脱毛の処置室で「寒いよね冷たくなってるごめんね」と擦られる左腕と全く同じである。レイトショーで岩井俊二を二本観たこと、誰よりも話を聞いてくれたからきっと私以上に地球の自転を感じていたこと、今になってよく、空から降ったフューチャーフォンが確認している。人格は交代した。私宛のメールが届き続ける。